🔭 アメリカ最前線 ②
推定420億円が空いている。線路に鹿が出る国に、鹿を追い払うソフト会社がありません
きょうの結論
英国の鉄道は遅延を「1分あたりいくら」で会計処理しています。だから減らすソフトに予算がつく。日本には払う財布が3つもあるのに、まとめて取る会社がいません。
TOPIC 1
「遅延1分の値段」が決まっている国では、予算がつきます
痛みが金額になっていれば商品になる。なっていなければ、誰も買わない。
420億円野生動物AIの国内推定TAM
1,000件規模国内空港のバードストライク(年)
160億円台鳥獣による農作物被害(年・高止まり)
在来線の動物衝突は、JR各社で年間数千件規模とされています。北海道や東北、中国地方の一部では1路線あたり年間数百件に達する区間もあります。
興味深いのは、捕獲頭数が過去最高水準なのに被害額が減らないことです。つまり「捕っても追いつかない」局面に入っていて、捕獲という解決策の限界が見えてきています。
TAM = その事業が最大まで広がったときに取れる市場の大きさ。ここでの数字はすべて筆者の推定。
TOPIC 2
日本には財布が3つ揃っていて、それぞれ別々に人力で対処しています
野生動物の個体数管理は環境省と自治体の事業として予算化されているので、行政向けの販路も開いている。
明日できる最初の一歩は、JR各社と大手私鉄の有価証券報告書やサステナビリティ報告から「輸送障害の原因別件数」と「保安設備投資額」を抜き出して、3社分を突き合わせることです。遅延1分の単価が置ける事業者が1社でも特定できれば、削減額の試算ができます。
TOPIC 3
診療所17万件の国で、AIはまだ「電子カルテの横」に立っているだけです
a16zは米国だけで1,080億ドルの機会があると論じた。日本の構造はもっと「専門科クリニック的」。
3つの変化が同時に来ています。第一に、オンライン資格確認の義務化と電子処方箋の拡大で、AIが読める形でデータが存在する前提がようやく整いました。
第二に、人が消えました。そして2024年4月の医師の働き方改革で、「院長が夜に事務作業を巻き取る」という従来の緩衝材が制度的に封じられました。これまで非効率を吸収していた装置が、法律で止められたわけです。
第三に、インプラントやオルソケラトロジーなど自費診療の比率が上がり、保険と自費を別の台帳で管理する運用が破綻しつつあります。推定TAMは約2,400億円。言語とレセプト制度が壁になるので、海外勢はそのまま入ってきにくい領域です。
リコール = 「次は半年後に検診へ」と患者に戻ってきてもらう仕組み。歯科や眼科では収益の中核になる。
TOPIC 4
コンテンツ大国なのに、AIに読まれた分の請求書を出せていません
権利者が数千社に分散し個別交渉の取引コストが高い、という条件は「集約する会社」の参入余地そのもの。
Hacker Newsで189ポイントを集めたのは、意外にも「投稿した直後に自分のサイトがAIボットのトラフィックで溢れた」という個人開発者の素朴な報告でした。
法整備は進みました。著作権法30条の4を根拠にAI学習目的でのデータの利用は原則として許容されてきましたが、2024年の文化庁による整理以降は「学習は原則可能だが、生成物の類似や市場侵害は別問題」という線引きが共有されています。つまり交渉のテーブルは用意されたのに、交渉を代行する事業者がいません。推定TAMは約380億円です。
同じ日にa16zが「AIが買い物をするとき、誰が報酬を受け取るのか」を公開し、American Expressが無断購買を防ぐ枠組みを発表しています。読む側と買う側の両方で「誰が誰に払うのか」の定義が同時に動いています。
TOPIC 5
モデルは身体を得て、薄いUIのアプリは淘汰されはじめました
基盤モデルのコストと規制対応を、単体アプリでは吸収できなかったということ。
キャラクター文化の本国である日本で、IP保有者が公式のコンパニオンAIをほとんど商用展開していないという事実は、この破綻の教訓と合わせて考える価値があります。
TAMはいずれも筆者の推定です。情報の正確性については個別にご確認ください。