🗽 アメリカ最前線 ①
クマの出没5万件・詐欺被害3,000億円。アメリカの新興企業は「守り」を先回りに変えはじめた
きょうの結論
起きてから駆けつける守りを、起きる前に近づけない守りへ。日本のほうが数字はずっと深刻なのに、そこを引き受ける製品がまだありません。
TOPIC 1
動物を「見つける」のではなく「遠ざける」AI
映像をクラウドに送らず現場で判断するので、電波の悪い山の中でも動く。
150台北米・欧州・豪州で稼働中
8,000本超仏国鉄で動物の影響を受ける列車(年)
2.72億ドル米民間航空の動物衝突損失(年平均)
スウェーデンのAIラボから生まれたFlox Intelligenceという会社が、TechCrunch Disrupt 2026のピッチコンテストで上位20社に選ばれました。端末は売り切りで、2年目からソフトの年間契約になります。鉄道車両大手のAlstomとも提携しています。
慣れ(順化) = 同じ刺激をくり返すと、動物がやがて「危険ではない」と学んでしまうこと。日本の畑でかかしが効かなくなるのと同じ。
TOPIC 2
日本の対策は「見つけて、人に知らせる」で止まっています
検知する会社は国内にもある。追い払って記録まで残す製品はまだ無い。
JR北海道では2025年度のクマの発見・衝突が76件と過去最多で、うち57件が衝突、176件の輸送障害につながりました。シカやイノシシを含めた農作物の被害額は188億円です。
お金の出どころははっきりしています。自治体には鳥獣対策の交付金があり、鉄道会社や電力会社には沿線と設備の保守予算があります。国内の市場規模は約150億円と見ています(筆者の試算)。
TOPIC 3
被害者のふりをするのは、AIのほうです
守りながら、相手の手の内を集める。発想の転換そのものが商品になっている。
オーストラリアのApate.aiは、2026年9月に815万ドル(約12億円)を調達し、米国進出とロンドン拠点の開設を進めています。顧客にはオーストラリア最大手のコモンウェルス銀行が入っています。
日本側の数字は桁がひとつ違う局面です。2025年の特殊詐欺は27,832件・1,423億円で被害額はほぼ倍増。SNS発の投資・ロマンス詐欺は15,168件・1,834億円。2つ合わせて3,000億円を超えます。SNS型は1件あたり1,213万円です。
TOPIC 4
スーパーの冷凍ケースが「武器」になった日
止まれば商品の廃棄だけでなく、夏場の温度逸脱による食中毒のリスクも生まれる。
省エネや遠隔保守のために、冷凍機をクラウドから監視する仕組みはこの10年で一気に広がりました。便利になった一方で、設備は保守会社に任せきりで、どこから外部につながっているのかを誰も説明できないという話をよく耳にします。
国内でも2025年にアサヒグループがランサムウェアで出荷停止、アスクルは営業利益が約90億円悪化したと報じられました。設備を常に見張って「ありえない運転」を止める運用サービスは、まだ手薄です。
OT = 工場や店舗の機械を動かすための仕組み。パソコンやクラウドを扱うIT部門とは別の人が管理していることが多い。
市場規模はいずれも筆者の試算です。元レポートの数値・事実は、事業判断の前に一次情報をご確認ください。