⚡ LAGLESS PORTAL2026-10-18 (日)毎日朝更新
🗽 アメリカ最前線 ①

受注の72.5%がFAXと電話。取引先に何も変えてもらわないまま、注文をERPへ入れるAIが米国で動き出しました

きょうの結論

今日の3つに共通するのは「相手を変える」から「こちらで受け止める」への転換です。FAXはFAXのまま受け、置き忘れた鍵は自分で片付け、規格違反は見つけてから消すのではなく出品の入口で止める。相手に無理を言わない日本の商習慣は、この流れでは強みになります。

TOPIC 1

「AC」と書いてあれば、ビンナガマグロのことです

ショートメッセージ 電話・留守電 手書きメモの写真 中国語・韓国語・日本語 AIが読み取り 商品マスタと照合 ERPへ入力 自信がない行は人へ お店ごとの癖も覚えます。ある店が「AC」と書いたら、それはビンナガマグロ(アルバコア)のこと。 飲食店の側は、今までどおりの出し方のままで構いません。
取引先にシステムを使ってもらうのではなく、来たものをそのまま受け止めて卸の事務だけを減らす設計です。
72.5%日本の卸がFAX・電話で受けている割合
30%米国の営業担当が手入力に使っていた時間
10万人米国でこの作業に就いている人の推計

会社の名前は Asakana。Y Combinator の2026年秋バッチで10月16日に公開されました。すでに米国の食品卸で本番稼働していて、その卸には1日に約60件の注文が届き、長いものは75行を超えます。

創業者の松岡雄大さんは元漁師で、三菱商事の水産部門にいた方です。自分でこの手入力をやっていた、というところから生まれた事業だそうです。共同創業者はGoogleで8年、Project MarinerやGeminiに関わったエンジニアでした。

ERP = 会社の受注・在庫・請求をまとめて扱う基幹システム。卸の仕事はここへの入力で終わります。
TOPIC 2

日本の卸は、いまも約8割がアナログに近いやり方で注文を受けています

FAX 電話・留守電 メール・LINE など 47.3% 25.2% 約7% インフォマートが2023年に卸売企業へ行った調査。FAXと電話だけで72.5%を占めます。 デジタル化の仕組みはありますが、どれも「飲食店の側に画面で発注してもらう」方式です。
個人経営の店や、長年FAXで発注してきた店主さんにとって、やり方を変えるハードルは小さくありません。

FAXを読み取るAI-OCRは普及してきましたが、多くは「文字を読む」ところまでです。「いつもの」「先週と同じ」を解釈し、商品マスタと照合し、ERPに登録し、確認の連絡まで送る。この一連を通しで担う製品はまだ多くありません。

卸の側には急ぐ理由があります。受注担当の深夜・早朝勤務、物流の2024年問題による締め時間の前倒し、インボイス制度で増えた請求や返品の処理。人手が足りないのに仕事は増えています。業務用の食品・酒類・水産・青果の卸を約8,000社、1社あたり年150万円と仮定すると、市場は約120億円になります。

TOPIC 3

AIエージェントは、侵入したのではなく「開いていたドア」から入りました

設定に残った認証情報 公開されたリポジトリ 広すぎるクラウド権限 AIエージェント 休まず・広く・速い 実システムの 個人データ 10月16日、インドのCERT-Inが発表。被害を受けた組織は、自分では気づいていませんでした。 公開GitHubで見つかった鍵は2025年に約2,900万件(前年比+34%)。MCPの設定ファイルからも2万4,008件。 2022年に見つかった有効な鍵の64%は、2026年になっても無効化されていません。
人の攻撃者なら鍵を探すのに手間がかかります。エージェントは休まず広く速いので、置き忘れがそのまま事故になります。

同じような事案は今年に入って続いています。7月にはAnthropicが、試験中のClaudeが弱いパスワードなどの基本的な手口で3社のシステムに入ったと公表しました。インドの件が新しいのは、複数の提供企業のエージェントが関わっていたことです。

日本でも、2024年度に民間事業者から届いた個人データの漏えい報告は1万9,056件で過去最多でした。国の対策も2026年10月1日から新しい段階に入ったばかりですが、「エージェントが外から拾った鍵で入ってくる」という経路には、制度も製品もまだ追いついていません。

MCP = AIと外部のサービスをつなぐための共通の仕組み。その接続設定にも鍵が書かれています。
TOPIC 4

日本では、発注した会社から「誰が何を置いたか」が見えません

発注した会社 SIerのリポジトリ 協力会社のリポジトリ クラウドの権限設定 発注者目線の棚卸し 鍵を数え、権限を削り、 来訪まで記録する 上場・中堅あわせ約1万社が年60万円で常時監視を契約すると、市場は約80億円。
国内のセキュリティ診断は年1回の点検が中心で、毎日のコミットを見張るサービスは海外製の代理販売が多いのが現状です。

日本には、開発をSIerや協力会社に任せることが多いという事情があります。だからこそ「発注者の立場に立って、委託先を含めて鍵を棚卸しし、権限を必要な分だけに削り、どのAIエージェントがいつ来たかまで記録する」国産のサービスに余地があります。

TOPIC 5

米国のモールは「見つけてから消す」をやめ、出品の入口で番号を照合します

🇺🇸 米国(2026年10月13日から一部施行) 🇯🇵 日本 出品の時点でFCC IDを提出させる ページに表示し、本物か照合する 商品を扱うモールは2027年3月1日まで 違反が見つかってから削除する 9社が「製品安全誓約」に署名し、 要請から2営業日以内に削除 入口での照合は各社の独自対応どまり 総務省の試買テストでは、2025年度第3次の報告だけで47機種が基準に適合しない電波を出していました。 技適の検索データベース・PSEの届出情報・型番やJANコードを突き合わせる照合SaaSに、空白があります。
米国が照合をモールの責任にしたことで、日本でも同じ議論が起きる可能性は高いと見ています。

Hacker Newsで243ポイントを集めたニュースでした。eBayがFCC認証の必要な無線機器について、出品時にFCC IDを提出させ、ページに表示するよう規則を変えています。既存の出品、小規模な出品者、中古品、アマチュア無線用は対象外です。

壁は、型番の表記ゆれとOEM品の扱い、そしてモールに採用してもらうための実績づくりです。最初は輸入代行や越境ECを支援する会社から入るのが現実的でしょう。大手モール10社、電気製品を扱う出品者3万社、輸入前の適合確認代行をあわせて、市場は約50億円と見積もっています。

🔒 この回の元レポート全文を読む

図解版は当日号も、これまでのバックナンバーもすべて無料で読めます。元レポートの全文とラボの実況が、月額750円の会員向けです。

会員について見る →

すでに会員の方は 📄 この回の元レポート全文を読む →

📚 これまでの回(バックナンバー)を見る →