⚡ LAGLESS PORTAL🔭 アメリカ最前線 ②2026-09-28 (月)バックナンバー
🔭 アメリカ最前線 ②

合計3,900億円ぶんの空席が3つ。表計算・証券決済・AIの継続学習、どれも日本に担い手がいない

きょうの結論

今日いちばん怖かったのは、派手なモデル発表ではなく「Databricksが表計算のスタートアップを買った」という短いニュース。米国では地味な工程が着々と事業になっているのに、日本には同じ場所に会社が一社もいない。空席は派手な場所にはない。

TOPIC 1

Excelを消すのではなく、Excelの下に基盤を差し込む

ありがちな発想 「Excelをやめさせて、 新しいツールに移行してもらう」 業務の人は表から離れられない 米国で収束しつつある発想 「表は消えない。だったら 表の下に基盤を差し込む」 Row Zero も Formula Insight も Excelを消さない 差し込んだ形 業務の人が触る、書き込める表計算のUI 直結したまま データウェアハウス(DWH)
Row Zero は「ブラウザで10億行を開ける表計算」。売りは行数ではなく、DWHに直結したまま表の形で触れること。

評価額 $100B 超・ARR $4B 規模の Databricks が、わざわざ表計算を買いました。しかも「まだ買収候補を探している」と付け加えています。Y Combinator の S24 にも Formula Insight(機関投資家の Excel モデルを管理・追跡・クエリできるようにする)という会社がいます。

DWH(データウェアハウス) = 社内のデータを1か所に集めて置いておく倉庫。Snowflake・Databricks・BigQuery など。
TOPIC 2

日本の歪み: DWHは入った。業務部門が触るUIだけが空席

いまの日本企業でよくある形 DWHは入った(Snowflake / Databricks / BigQuery) 国内BIは「見るためのダッシュボード」 書き込みはできない 結局「エクスポートしてExcel」に戻る ここが空席 ① DWHに直結している ② 書き込みができる ③ 日本語UIで業務の人が普通に使える + 電子帳簿保存法の証憑要件を 最初から設計に織り込める(国内勢だけの武器) 2025〜2026年に生成AIを入れようとした会社は、例外なく同じ壁にぶつかった。 「AIに読ませるデータが、どこにも整理された形で存在しない」という壁。
止まった理由はモデルの性能ではなかった。「AIに読ませるデータが、どこにも整理された形で存在しない」という置き場所の問題だった。
1,200億円表計算UIの国内TAM(見立て)
1,800億円証券決済の後工程
900億円AIの継続学習

基幹システムの外側にある見積・在庫・原価計算・人員計画・予実管理のほとんどが xlsx に入っていて、そのファイルがメール添付と共有フォルダの間を回っています。悪口ではなく事実です。参入難易度は、正直そこまで高くありません。

TOPIC 3

米国は2024年に決済を1日早めた。日本はまだ2日のまま

株を売買してから、決済が終わるまで 米国 T+1 2024年5月に移行ずみ 英国・EU T+1 2027年10月11日に予定 日本 T+2 のまま 議論は始まっているが、時期は未定 日本が動かなくても、日本の負担だけは増えた 米国株を持つ機関投資家・ 信託銀行・カストディアン 時差の分、その日の夜に 照合と為替手配を終える 自動化ではなく 夜間シフトの追加で吸収
2024年に完全適用された時間外労働の上限規制と、バックオフィス人材の高齢化に、正面から衝突している。

照合作業の実態は、いまもCSVファイルと突合表と電話です。埋めているのはSIerの受託開発と大手BPOだけで、プロダクトとして解いている会社がありません。Y Combinator の S24 には TradeFlow(証券決済をAIで処理する)がいて、a16z は本日付で証券関連 Highstock の Series A をリードしたと公表しました。華やかな前工程ではなく、その後ろの事務にお金が入り始めています。

参入難易度は高めです。金融機関の後工程に入るには業務知識と信頼の両方が要ります。逆に言えば、その両方を持っている人にしか取れない席が空いている、ということでもあります。

TOPIC 4

日本企業のAIは、納品された日がピークになる

導入してからの精度の伸び方 導入からの時間 → 精度 → 検収 = ここがピーク 納品型(いまの日本のAI案件) 継続学習(運用しながら更新し続ける) 検収基準が「精度◯%」の一点計測だから 必要なのは、毎月更新して運用費を取る会社
技術力の問題ではなく商習慣の問題。納品後に賢くなる前提で、契約が書かれていない。

皮肉なことに、継続学習の原料は日本にこそ大量にあります。設備の故障履歴、熟練作業者の判断ログ、保守報告書の記述、現場のヒヤリハット。製造・保守・物流に何十年分も積み上がっていて、外部のフロンティアモデルには絶対に入っていません。学習データとして買えないからです。

Y Combinator の W25 には Thirdlayer(企業AIの継続学習)、同じバッチに TrainLoop(推論の後段学習)。売っているのはモデルでもアプリでもなく、更新のオペレーションです。

継続学習 = 納品して終わりにせず、現場のログと「人が直した記録」を毎月流し込んで、モデル自体を更新しつづけること。
TOPIC 5

今日の米国テックを、横に眺めると

エージェントをめぐって、2つの層が同時に立ち上がった 権限を配る層 Butter / Freestyle = 専用のサンドボックス Ando = エージェントに個別のIDと受信箱 「実行環境」と「身元」を与える それを監査する層 統制のないエージェントが利用者の画像53枚を 公開画像サイトへ投稿(OpenAIの研究環境) 一部サービスが大量の個人データをウェブに露出 インフラの資本構造も変わった Anthropic は Akamai に7年で $11.6B をコミットし、見返りに Akamai が株式を差し出す 電力と計算の長期調達が、株式と債券の設計問題に変わった
スマートグラスも「端末の性能争い」から「その上で動くOSと小型モデルの争い」へ移った。

もう1社挙げるなら SureBright(YC S24)。「すべての小売業者に AppleCare のような延長保証を組み込めるAPI」です。日本の延長保証は家電量販店が事実上の寡占で、EC や D2C ブランドにはほとんど提供されていません。しかも少額短期保険業という制度がすでにあり、法的な入口は開いています。決済SaaSと組めば一気に配れる構造です。

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