🔭 アメリカ最前線 ②
設計ソフト2.2兆円の7割を3社が握り、日本の国産は90年代に消えた。OpenAIが「チップをLLMに描かせた」今日は、その分岐点
きょうの結論
今日はAIがソフトウェアの中から出ていって、モノの設計図と、モノを動かす電線のほうへ向かった一日。どれも日本に資産はあるのに、担い手だけがいない領域だった。
TOPIC 1
熟練者の暗黙知の塊だった「設計」に、モデルが入り始めた
回路の記述、配置配線の制約、どこを妥協してどこを守るか。教科書に書けない判断の積み重ねだった領域。
2.2兆円EDAの世界市場(年間)
7割超上位3社の世界シェア
5社以上YC直近2バッチの設計自動化系
TOPIC 2
日本では「道具が高い」と「教える人がいない」が同時に来ている
この領域で参入を止めるものは技術難度だけ。「誰も止めない」というのは、他のテーマとの大きな違い。
Y Combinator には、基板設計を自動化する Diode Computers、AI搭載のハードウェア設計ソフト Dalus、ハードウェアエンジニア向けのAIネイティブIDE Artifact、産業制御システム向けEDAの Outerport などが並んでいます。資本側も同じ方向で、ベンチャースタジオが$100M(約150億円)を調達し、その全額をフィジカルAI(物理世界を扱うAI)に振り向けると宣言しました。
日本市場の規模は、国内のEDA・設計支援ツール市場に設計受託と部品表管理のSaaS置き換え分を加えて、おおむね1,200億円と見積もられています(記事側の推定)。
TOPIC 3
アメリカの答えは「ソフトを売らない」。管理会社そのものになった
同じバッチには、ホテル向けの「AI従業員」Riviera、商業保険の代理店機能そのものを持つ Harper も並ぶ。
AIロールアップ = 人手のかかる業務を持つ会社を買ったり自分で始めたりして、その中身をAIで置き換えて利益率を上げるやり方。ソフトを売るのではなく、業務そのものを引き受けます。
TOPIC 4
日本では、管理会社のほうが「受託を辞退」し始めている
狙うべきは、大手が採算に合わないと手放している戸数50戸未満・築30年以上の物件。
制度面にも追い風があります。2022年に始まったマンション管理計画認定制度と管理適正評価制度で、管理の状態が点数化・可視化される流れができました。区分所有法の改正議論で決議要件の緩和が進めば、管理会社の切り替えそのものが起きやすくなります。マンション管理業の登録は必要ですが、これは取得不可能なハードルではなく、むしろ後から来る競合を防ぐ壁になります。TAMはフロント・事務・見積業務相当としておよそ800億円。
TOPIC 5
地熱資源は世界3位。なのに発電量は10位圏外という不一致
Mazama Energy が $135M(約200億円)を調達。400℃超の超臨界領域に届かせ、1本の坑井あたりの出力を桁違いに上げる。
なぜ今なのかというと、AIのデータセンターが24時間止まらない電力を求めるからです。太陽光や風力はコストこそ下がりましたが出力が変動します。この不一致が、地熱の評価をここ数年で急激に押し上げました。同じ日、Twilio創業者の次の賭けが核融合であることも報じられています。
そして日本の面白いところは、地熱タービンの世界シェアの6割超を東芝・三菱重工・富士電機が持っていることです。「装置を売る側」としては世界のトップランナーでありながら、「開発して電気を売る側」のプレイヤーが極端に少ない。装置メーカーから資産保有型の発電事業者へ回る余地が、まるごと空いています。推定TAMは約2,500億円、参入難易度は今日のなかで最も高い★5つ。
TOPIC 6
今日の横断:規制の変更が、そのまま需要を作っている
人口減少下で都市を畳んでいく作業が待っている以上、行政まわりの需要は確実に増える。
今日いちばん「日本でやりたい」と思ったのは、やはり Assembly HOA です。この会社が賢いのは、ソフトウェアを売らないと決めたところだと思います。もう1社挙げるなら Diode Computers で、こちらは国内の基板設計受託会社と組んで「日本の図面文化に合った設計AI」を作る入り方があります。JEITAの部品表フォーマットや系列企業間の図面授受の慣習は、海外ツールがそのままでは使えない理由であり、同時に国内プレイヤーだけが超えられる参入障壁でもあります。
TAMおよび日本市場に関する見立ては、いずれも記事側の推定です。情報の正確性については個別にご確認ください。