核融合の技術も、全国統一の建築基準法も、経済安全保障推進法も、日本にはもう制度と技術だけが先にあります。無いのは、その上に載せる商品のほうです。
技術の側では、日本はむしろ最前列にいます。JT-60SAは世界最大級ですし、京都フュージョニアリングやHelical Fusionも育っています。ところが需要の側がまるで整っていません。日本の電力調達は容量市場や長期脱炭素電源オークションという公的な枠組みが中心で、民間同士が自力で長期契約する商慣行が育たなかったからです。
需要はすでに立ち上がっています。千葉・大阪・北海道では、用地よりも電力の確保のほうが先に効く制約になりつつあります。「電気が引けないから建てられない」はもう仮定の話ではありません。参入難易度は★5つ。電力の知見と金融の与信設計が両方要ります。
Y CombinatorのW25バッチに、建築・都市計画の許認可を狙う企業が固まって並んでいました。Permitify(建築計画審査のAIコパイロット)、Waypoint Transit(都市計画の自動化)、Tire Swing(アフォーダブル住宅のAIコンプライアンス)。同一バッチに複数社という事実が、YC側がここを構造的な市場と見ている証拠だと思います。
参入難易度は★3つ。建築の専門知識は要りますが、技術的な壁は電力ほど高くありません。設計事務所・工務店・指定確認検査機関向けのSaaSに図書作成の代行まで含めて、国内TAMはおよそ450億円。今日の3つのなかで、最も現実的に着手しやすい領域だと思います。
日本のソースコード管理は、GitHubとGitLab.comが事実上の標準です。防衛・金融・電力・医療といったデータ越境に神経を使う領域ですら、CI/CDのビルドログやシークレットがどの国のリージョンを通過しているかを保証できていないケースが少なくありません。自前でGitLabを建てている大企業はありますが、それは「製品」ではなく情シス部門の苦行で、規模の経済がどこにも働いていません。
日本語サポート、国内法準拠、国内リージョン限定を初期条件にしたGit・CI・オブジェクトストレージ・推論エンドポイントのバンドル。参入難易度は★4つですが、Nscaleが$3.5B、Crusoeが$30B評価という数字が示すとおり、この領域には世界的に資本が流れ込んでいます。
今日の3つを並べると、共通点があります。どれも日本には制度や技術がすでにあるのに、商品が無いのです。核融合には技術があり、建築確認は法令が全国で統一されていて、データ主権には経済安全保障推進法という器がある。それなのに、誰もまだ売っていません。
制度をゼロからつくらせる仕事は途方もなく重いのに対して、すでにある制度の上に商品を載せる仕事は圧倒的に軽いはずです。今日の米国のニュースは、その「載せ方」を先に見せてくれた教科書のようなものです。
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