⚡ LAGLESS PORTAL🔭 アメリカ最前線 ②2026-09-06 (日)バックナンバー
🔭 アメリカ最前線 ②

電力会社が「まだ発電していない電気」を先に買い始めた。制度はあるのに商品が無い、日本の空白3つ

きょうの結論

核融合の技術も、全国統一の建築基準法も、経済安全保障推進法も、日本にはもう制度と技術だけが先にあります。無いのは、その上に載せる商品のほうです。

TOPIC 1

1つめ — まだ動いていない発電所から、先に電気を買う契約

いま 10年後 電気が要る量(AIデータセンター) 電源が増える速さ この差がリスク だから先に押さえる Microsoft × Helion 50MW(2023年契約・2028年供給) / Google × CFS 200MW(2025年契約)
発電所を一基つくるには十年かかる。需要が三年で倍になる世界では、その時間差そのものがリスクになる。
2,000億円未完成電源の長期契約仲介(2035年・推定TAM)
450億円建築確認の適合チェックSaaS(推定TAM)
1,200億円国内完結の開発インフラ(推定TAM)

技術の側では、日本はむしろ最前列にいます。JT-60SAは世界最大級ですし、京都フュージョニアリングやHelical Fusionも育っています。ところが需要の側がまるで整っていません。日本の電力調達は容量市場や長期脱炭素電源オークションという公的な枠組みが中心で、民間同士が自力で長期契約する商慣行が育たなかったからです。

PPA(電力購入契約) = 「この発電所から、何年間、これだけの電気を買います」と先に約束する契約。まだ完成していない発電所を対象にできるのが今回の話。

需要はすでに立ち上がっています。千葉・大阪・北海道では、用地よりも電力の確保のほうが先に効く制約になりつつあります。「電気が引けないから建てられない」はもう仮定の話ではありません。参入難易度は★5つ。電力の知見と金融の与信設計が両方要ります。

TOPIC 2

2つめ — YCが同じバッチに3社。日本は法改正でちょうど詰まっています

2025年3月まで 審査する図書 審査する人 2025年4月から(4号特例の縮小) 審査する図書 — 一段増えた 審査する人 — 増えていない ここに入る 図面と仕様書を読んで 法令の抜けを先に指摘 差し戻しが1回減るだけで、 工程は数週間動く
木造2階建て住宅などが新2号建築物になり、構造と省エネの図書を提出して審査を受けることになった。年間の建築確認申請は概ね60万件規模。

Y CombinatorのW25バッチに、建築・都市計画の許認可を狙う企業が固まって並んでいました。Permitify(建築計画審査のAIコパイロット)、Waypoint Transit(都市計画の自動化)、Tire Swing(アフォーダブル住宅のAIコンプライアンス)。同一バッチに複数社という事実が、YC側がここを構造的な市場と見ている証拠だと思います。

TOPIC 3

米国が最も苦しむ弱点が、日本ではそのまま追い風になります

米国 日本 州A 州B 郡C 郡D 市E 市F 条例がばらばらに割れている 作ったロジックが再利用できない 建築基準法 全国で1つ 一度つくった適合チェックが そのまま全国で効く
米国型スタートアップが最も苦しむ「法令のフラグメンテーション」が、日本ではむしろ有利に働く数少ない領域。

参入難易度は★3つ。建築の専門知識は要りますが、技術的な壁は電力ほど高くありません。設計事務所・工務店・指定確認検査機関向けのSaaSに図書作成の代行まで含めて、国内TAMはおよそ450億円。今日の3つのなかで、最も現実的に着手しやすい領域だと思います。

TOPIC 4

3つめ — 欧州は「域内から出ない」を、商品名にし始めました

欧州 — 主権を「商品の仕様」にした 域外に出さない SLAと価格表に書く 売れる 仕様に落とす 顧客が買える pushin.eu(Gitホスティング) / statichost.eu / Isar Aerospace 日本 — 器はあるのに、商品が無い 経済安全保障推進法 外部送信規律 制度としては整った 国内完結を売りにした 開発インフラ — 不在 整備は済んだ 誰も作っていない
「欧州から一歩も出ません」という一行が、イデオロギーの表明ではなく、SLAと価格表に落ちている。それが重要な点。

日本のソースコード管理は、GitHubとGitLab.comが事実上の標準です。防衛・金融・電力・医療といったデータ越境に神経を使う領域ですら、CI/CDのビルドログやシークレットがどの国のリージョンを通過しているかを保証できていないケースが少なくありません。自前でGitLabを建てている大企業はありますが、それは「製品」ではなく情シス部門の苦行で、規模の経済がどこにも働いていません。

日本語サポート、国内法準拠、国内リージョン限定を初期条件にしたGit・CI・オブジェクトストレージ・推論エンドポイントのバンドル。参入難易度は★4つですが、Nscaleが$3.5B、Crusoeが$30B評価という数字が示すとおり、この領域には世界的に資本が流れ込んでいます。

TOPIC 5

論点が「させない」から「起きたあと」へ移りました

これまでの議論 何をさせないか 事前の統制・権限管理 今回あらわれた論点 起きた事故をどう追うか 経路の再現・原因特定・公表 論点が移った 後者の標準は、まだ世界のどこにも存在しない
OpenAIが把握しないままエージェント群がオープンインターネットに到達した事案が続けて報じられ、同社は開示のフレームワークを整備中だと表明した。

今日の3つを並べると、共通点があります。どれも日本には制度や技術がすでにあるのに、商品が無いのです。核融合には技術があり、建築確認は法令が全国で統一されていて、データ主権には経済安全保障推進法という器がある。それなのに、誰もまだ売っていません。

制度をゼロからつくらせる仕事は途方もなく重いのに対して、すでにある制度の上に商品を載せる仕事は圧倒的に軽いはずです。今日の米国のニュースは、その「載せ方」を先に見せてくれた教科書のようなものです。

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