きょう大きなお金が向かったのは、AIそのものではなく、AIを支える人・お金・仕組みだった。その目で日本を見ると、412万人が母国に送金する手段という、いちばん大きな穴が見えてくる。
サンフランシスコのAfterQueryという会社が、創業から5ヶ月で評価額を10倍以上に伸ばしました。Y Combinatorの歴史上いちばん速いユニコーン化だそうです。創業者は22歳と23歳。やっているのは、医師や弁護士のような専門職を集めて、AIが出す答えの正しさを検証させることです。
日本でも国産の大規模言語モデルの開発が進んでいます。ですが、その質を決める「専門家によるフィードバックデータ」を組織的に集める仕組みは、ほとんど存在しません。国内の大手クラウドソーシングは、安価な汎用作業をこなす市場として設計されていて、医師や弁護士を計画的に動員する発想では作られていないからです。
一方で土壌はあります。副業解禁で専門職がすきま時間に働けるようになり、フルタイムは無理でも時間単価のよい仕事なら参加したい層が確実にいます。しかも日本語と日本の制度に精通していないと作れないデータなので、海外勢がそのまま入ってきにくい。参入しにくさが、そのまま守りの壁になる珍しい領域です。
マイアミのFélix Pagoという会社が、総額2億ドルを調達しました。アメリカに住む中南米出身の人が、WhatsAppでチャットするだけで母国の家族に送金できるサービスです。裏側ではブロックチェーンとデジタル通貨が動いていますが、利用者はそれを一切意識しません。
これだけの人数が日本で働いているのに、母国への送金は今も銀行窓口や従来型の国際送金が中心で、手数料は3〜8%かかります。日本にはLINEという巨大なメッセージ基盤も決済基盤もすでにあるのに、その中に低コストな海外送金を埋めこんだサービスは存在しません。
イスラエルとオランダにルーツを持つWonderfulが5.5億ドルを調達し、評価額は半年で20億ドルから50億ドルへ倍増しました。おもしろいのは、この会社がもともと英語圏ではない市場向けに作りこんで伸びたことです。「非英語圏に最適化することが、むしろ差別化になる」を証明してしまいました。
日本のコールセンターは人手不足がとりわけ深刻です。それなのに国内のAI応対は、よくある質問への回答や一次受付の振り分けといった単機能で止まっていて、複数のAIと社内システムを横断して自律的に判断させる発想の製品はほとんど育っていません。敬語や複雑な承認フローは、英語中心に作られた海外製品がそのまま移植しにくい領域でもあります。
きょうは他にも、AI監視をCPUで動かして費用を下げるLasso Security(3,000万ドル)、AIへの攻撃やデータ汚染を検知するHiddenLayer(1億ドル)、フィットネス業務基盤のEnhance(1,820万ドル)などに資金が入った。どれも「AIそのもの」ではなく、AIを守り・支える側にある。
🔒 この回の元レポート全文を読む
図解版はこのとおり公開しています。もとになった元レポートの全文と ラボの実況が、月額750円の会員向けです。
会員について見る →すでに会員の方は 📄 この回の元レポート全文を読む →