AI一色のY Combinatorの今期バッチで、いちばん拍手を集めたのはAIでもロボットでもなく「依存症治療のオンライン診療」だった。評価されているのは派手さではなく、AIと制度を組み合わせて放置された問題を解くこと。
日本にもfreeeとマネーフォワードという立派な会計SaaSがあります。ただし両社のAIは、まだレシートを読む・仕訳を提案するという入力支援の域です。決算や連結までAIが自分で回す「AIネイティブERP」は、日本にはまだ存在しません。
従業員100〜1,000名規模の日本の中堅企業は、いまだにOBIC7や勘定奉行、SAPの世界にいます。会計基準や税制への作り込みは重い仕事ですが、それは同時に後発を寄せつけない参入障壁でもあります。
YC S26のSunflower Clinicは「全50州展開・公的保険で償還される依存症オンライン診療」を掲げ、今期最多クラスの439票を集めました。AIブームの真っ只中で、投資家と起業家のコミュニティが最も拍手を送ったのが、地味で重くて偏見の強い医療領域だった——ここが今日いちばんの発見です。
日本のギャンブル依存が疑われる人は約200万人規模。減酒薬という処方の選択肢もあり、禁煙アプリで保険適用を勝ち取ったCureAppという前例まであります。制度的にはもう作れるのに、まだ誰も本格的に作っていません(推定TAM 約600億円)。
同じ週に周辺部品も一気に出てきました。Plaudはスマホを出さずに音声でAIへ指示できるeSIM内蔵イヤホンを発表、Googleは検索のAIモードに航空券の価格追跡とホテル予約を実装(8/27)、VisaとMastercardもエージェント決済のプロトコルを公表済み。「AIが人の代わりに買う」ためのインフラ争いが静かに始まっています。
日本はカード不正利用への警戒が強く、バーチャルカードをAPIで柔軟に発行できる層がそもそも薄い。現実解は、既存のプリペイド事業者と組んで「上限つきエージェント専用ウォレット」を作ることでしょう。
ソフトウェアの会社だったはずのベンチャーキャピタルが、発電と冷却と製造の世界に本格的にお金を入れ始めました。その一方で、業務の大半は巨大モデルではなく小型モデルで足りるという議論が支持を集めています。
この二極化は、日本にとって朗報です。最先端モデルの開発競争には参加できなくても、「日本語の業務に特化した小型モデルの実装」と「国内の物理インフラ(電力・データセンター・ロボット周辺)」には、確実に取り分があるからです。
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