🔭 アメリカ最前線 ②
29MBのAI・制裁金は売上高の10%・すでに2万社。GPUを積む競争の隣で「積まない競争」が始まり、日本に3つの席が空いた
きょうの結論
今日の空白は「日本が遅れているから空いている」のではなく、「日本の制度がそうなっているから、まだ誰も手をつけていない」種類のもの。前者は追いつく話だが、後者は設計する話で、他社から追いかけられにくい。
TOPIC 1
29メガバイト。ギガではない
資本量で勝てない場所からは退き、機械を作る力が効く場所に賭ける。敗北ではなく、地形に合わせた戦い方。
29MB大手軽量モデルに匹敵と主張するモデルの上限サイズ
50%コーディングエージェントのトークン削減を掲げる企業も登場
900億円組込みモデル最適化の推定TAM(日本)
日本には通信環境が不安定な現場が大量にあります。工場の奥、建設現場、地方の農地、山間部の医療・介護。そしてデータを外に出せない規制産業も多い。日本では、端末内での推論が「妥協」ではなく「要件」になる領域が、諸外国より広いのです。それなのに、モデルの量子化・蒸留・組込み最適化を専門に請け負う日本企業はほとんど見当たりません。
オンデバイス推論 = クラウドに送らず、機械やスマホの中だけでAIを動かすこと。通信が切れても動き、データが外に出ない。
TOPIC 2
米国は選択肢が増え、日本は減り続けている
日本の民間医療保険は年3.5兆円規模あるのに、その大半は個人が個人の判断で入るもの。企業の福利厚生設計とつながっていない。
参入難易度は高めです。保険業法と健保法の制約が厚く、保険会社や代理店との提携が前提になります。それでも日本市場で約1,800億円規模の機会があると見ています。そして何より、この領域は「規制が厚いから誰もやっていない」のであって、「需要がないから誰もやっていない」のではありません。この違いは決定的です。
TOPIC 3
韓国は売上高の10%。日本はまだ「指導」
日本にもSOC 2の取得代行はある。だが「取得した後、その統制が形骸化しない仕組み」を売っている会社はほとんど無い。
この日、コンプライアンスを「一度きりのイベント」ではなくエージェントが証跡収集・統制テスト・是正を常時実行し続ける状態にする企業が約50億円を調達しました。投資家側の動きと規制側の動きが、同じ日に同じ方向を指していたわけです。日本市場で600億円規模と見ています。参入に免許は不要で、既存の監査法人や審査機関との提携が実務上の鍵になります。
TOPIC 4
制度の複雑さを、参入障壁として味方につける
海外の成功事例をそのまま持ち込むより、「日本の制度の複雑さ」を味方につけたほうが長続きする。
同じ日、AIエージェントの安全神話が同時多発的に崩れたのも印象的でした。研究者がAIを使って別のAI企業のシステムに侵入して従業員アカウントと内部コードへのアクセスを得た件、米軍でAIの誤情報に基づく報告が危うい事態を招いた件、コーディングツールがGit履歴を無断でクラウドへ送っていたという指摘。議論の焦点が「AIでどれだけ速く作れるか」から「AIの境界をどう監査するか」へ移っています。
TOPIC 5
横断して見えた、日本側の空白リスト
地味に聞こえる領域ほど、参入の余地は大きく残っている。
今日の米国テックは、二つの相反する方向に同時に引っ張られていました。片方ではデータセンターに数千億円が注ぎ込まれ、地下3マイルまで掘って電力を確保しようとしています。もう片方では、29メガバイトのモデルが端末の中で静かに動きはじめています。どちらが勝つ、という話ではありません。ただ、日本にいる私たちにとって、後者のほうがはるかに手が届きやすいことは確かです。