🔭 アメリカ最前線 ②
合計2,350億円。中古車・非公開株・相続——制度が需要を先に作っている、日本にまだない3つの市場
きょうの結論
車の中に前の持ち主が残ったまま年350万台が流通し、上場しない会社の社員は報われる手段を持たず、年160万件の相続がいまも紙と印鑑で処理されている。派手さはないが、締切のほうから毎年やってくる市場。
TOPIC 1
スマホは初期化するのに、車は誰も初期化していない
米国ではこの「引き渡し時の消去」を証明書付きで代行するサービスが、ディーラー向けSaaSとして成立している。
620億円車のデータ消去・同意管理の推定市場
780億円非公開株の流動性まわりの推定市場
950億円相続手続き支援の推定市場
日本でこれが刺さる理由は、技術ではなくコンプライアンスです。中古車販売大手の体制が厳しい目にさらされてきた分、「きちんとやっている証拠を残す」需要が高まっています。検査項目表に一行加えるだけで、全車両に発生する業務になります。
TOPIC 2
怒りが規制になり、規制が市場になる——その速さ
2022年の改正で「個人関連情報」の提供には確認義務が入ったが、それは提供する側の手続き。消費者が追跡・削除する市場は作られていない。
TOPIC 3
上場しないまま巨大化する。すると社員が報われなくなる
上場が遠い会社ほど優秀な人が抜けていく、という逆向きのインセンティブが働く。個社ではなく市場設計の問題。
空白は3つです。①セカンダリー取引の仲介 ②権利行使のための資金をノンリコースで貸す金融 ③第三者による継続的な評価額の算定(日本版409A)。金商法の登録が前提なので参入難易度は星4つ。片手間ではできませんが、だからこそ先に組んだ者の優位が長く続きます。
セカンダリー市場 = 上場していない会社の株を、社員や初期投資家が途中で売り買いできる場所。ここが無いと、会社が売れるか上場するまで誰も現金化できない。
TOPIC 4
Miroは92%オフ、Harveyは9か月で1.4倍。二極化がここまで来た
日本ではVCが償却するか、創業者が抱え続けるかの二択になっている。
TOPIC 5
年160万件の相続。その9割は、税理士にも頼まれていない
いちばん重い工程は分配でも税務でもなく、「何があるか分からない」こと。そこを標準化できれば後は自動化の射程に入る。
TOPIC 6
相続登記の義務化で、締切が毎年自動的にやってくる
司法書士と行政書士はあわせて約7万人。単価の低い一般的な相続を全件さばききれてはいない。
ただし設計には注意が要ります。弁護士法72条や司法書士法の業務範囲に触れないよう、「手続きの代行」ではなく「情報の整理と士業へのマッチング」に切り分けることが前提です。入口を消費者側に置くか金融機関側に置くかで、事業の形はまったく変わります。