⚡ LAGLESS PORTAL🔭 アメリカ最前線 ②2026-09-02 (水)バックナンバー
アメリカ最前線 ②

制度は日本のほうが先に開いたのに、
入ってくる会社がいません

きょうの結論

今日の3つはどれも「技術がない」でも「市場がない」でもなく、そこに立つ会社がいないという形の空白でした。残っている変数は、誰かが「やる」と決めるかどうかだけです。

TOPIC 1

米国は締めにかかり、日本は法律で開けた

米国 日本 外部決済が解禁された スマホ新法で制度が開いた 代替クライアントを遮断し 寄付リンクまで塞いだ その扉の向こうに 立つ事業者がいない その反動で ところが
制度で開かされたぶんを運用ルールで取り返す米国と、開いたまま空いている日本。

Google Playが代替クライアント「Aurora Store」の配信をブロックし、AnkiDroidは寄付リンクを載せられなくなったとissueを立てました。派手なニュースではありませんが、日本の制度がちょうど正反対を向いているので目を引きます。

日本では2025年12月にスマホ新法が全面施行され、代替ストアの受け入れ・サイドローディング・第三者課金がOS提供事業者に義務づけられています。米国より先に開いているのに、年齢確認・マルウェア審査・返金処理・相談窓口・インボイスを日本法の要件で引き受ける「配信レイヤー」の担い手がいません。

30%従来のストア手数料
0-12%外部決済経由なら実質この程度まで下がる
2.6兆円国内モバイルアプリ市場。7割超がゲーム

記事の見立てでは、この2.6兆円のうち代替配信・第三者課金経由が5%に届いた時点で、手数料・審査・BPOを合わせて1,300億円ほどの市場が立ち上がるとしています。

TOPIC 2

新造船が届くのは2029年。それまでは改造しかない

レトロフィットしか選べない5年間 202620272028 202920302031 IMOの燃料課金が始まる いま発注した新造船が届きはじめる
課金が先に始まり、船は後から届く。その差の5年がまるごと改造の窓になる。

Newlightという会社が900万ドルのシードを調達しました。既存のディーゼル主機の吸気側に水素を噴射して燃焼効率を上げる技術で、シンガポール発ガーナ着の8,500海里を実際に走り切っています。実験室ではなく商業航路での実証です。

6万隻世界の外航船。平均船齢は12年超
5,000隻日本の内航船隊。平均船齢は15年超
8割内航船主のうち、保有5隻以下の中小事業者

日本は実質支配船腹量で世界2位、舶用機器の技術者も分厚く残っています。それでも「既存船に後付けする装置を船主に直接売る」レイヤーが育っていないのは、大手造船所と舶用メーカーの垂直統合が強く、船主と直接つながる経路が細いからだと記事は指摘します。

レトロフィット = 新しく作り直すのではなく、いま動いているものに後から装置を足して性能を上げること。
TOPIC 3

土管は敷かれつつある。その上が空いている

米国 日本 アプリ層 予約・服薬・AI問診 標準API(HL7 FHIR) 法律で開示を義務づけ 情報を塞ぐと違法 目標はあるが罰則なし 開くかはベンダー次第 ここが空いている 標準APIを敷いている最中 下から順に積み上がる
米国が10年かけて積んだ層を、日本はこれから5年で作ることになる。

ChatGPT HealthがEpicとの連携を始め、臨床医が診療記録を読み取り専用で取り込めるようになりました。ただし土台は今日できたものではありません。米国は2016年の21st Century Cures Actで、標準API(HL7 FHIR)の提供と情報ブロッキングの禁止をベンダーに義務づけています。

6割強日本の一般病院の電子カルテ普及率。400床以上なら9割超
18万全国の医療機関。うち病院が約8,000

普及率は低くありません。問題はベンダーごとに独自仕様で、施設をまたいだ参照がほぼできないことです。診療情報提供書が紙とFAXでやり取りされる現場が2026年のいまも珍しくない、と記事は書いています。

FHIR = 病院ごとにバラバラだったカルテのデータを、外から同じ形で読み書きするための共通規格。
TOPIC 4

3つとも、同じ形の空白だった

制度需要技術 担い手 アプリ配信 海運のレトロフィット 電子カルテ連携 ○○○ ○○○ ○○○ ✕✕✕
足りないのは技術でも市場でもなく、そこに立つと決めた会社だけ。

横断で目を引いたのは、Y Combinatorの2026年冬バッチから商用保険ブローカー向けAIが3社(Harper、Vantel、CopyCat)出てきたことです。同じバッチに同じ領域が3社入るのは、意図的に賭けているサインだと記事は読んでいます。日本の損保代理店は全国に約15万店ありますが、業務システムは保険会社から支給される端末に依存していて、中立のAI層がありません。

タイムマシン経営は普通「米国で流行ったものを日本に持ってくる」意味で使われます。でも今日見たものは少し違いました。持ってくるべきなのはプロダクトそのものではなく、その市場に賭ける決断の速さのほうかもしれません。

🔒 この回の元レポート全文を読む

図解版はこのとおり公開しています。もとになった元レポートの全文と ラボの実況が、月額750円の会員向けです。

会員について見る →

すでに会員の方は 📄 この回の元レポート全文を読む →