🗽 アメリカ最前線 ①
職人は40年で83%減。米国では「職人学校を買って束ねる」会社が生まれ、革工芸教室の半分は若いテック社員だった
きょうの結論
AIが賢く安くなるほど、AIには生み出せないものに値段がつきます。日本は職人・専門家・天然物の3つを全部持っているのに、それを事業として束ねる資本だけが無い状態です。
TOPIC 1
一度売却した起業家が、次に選んだのは「手仕事の学校」だった
米国はこの50年で「師匠から弟子へ技を伝える鎖」を切ってしまった、というのが創業者の問題意識です。
83%減日本の伝統的工芸品の従事者(1979→2022年度)
4.8万人2022年度の従事者(50代以上が63.6%)
800億円日本での市場規模の推定
同じ文脈で、Mirrorを5億ドルで売却した創業者はタッチスクリーン卓「Board」で3,500万ドル、Bonobos創業者のPieは2,400万ドルを集めています。人を同じ部屋に集める事業に資本が入り始めました。
ロールアップ = 同じ業種の小さな会社をいくつも買って束ね、システムや仕入れを共通化して大きくする手法です。
TOPIC 2
日本は「教えられる人」はまだいるのに、教える場を束ねる資本が無い
生産額は2016年度に1,000億円を割り込み、その後も減り続けています。
需要側ははっきりしています。都市のIT企業やコンサルで働く人の「手を動かす趣味」への関心は高いのに、日本で手に入るのは数千円の単発ワークショップがほとんど。数か月かけて身につけ、修了後に工房を共同で使えて販路もある、という一気通貫の課程がありません。
TOPIC 3
ソフトを売るのをやめて「完成した正解データ」を納品したら、売上が18倍になった
同業のMercorは年換算20億ドル。ただし売上の6〜7割を専門家への支払いに充てています。
日本の大企業や官公庁が今いちばん困っているのが、まさにこのデータです。日本語の業務データと採点の仕組みが足りていません。国内のアノテーション事業者は画像の枠囲みが中心で、弁護士・医師・技術者のネットワークまで含めて納品できる事業者は見当たりません。
アノテーション = AIに学習させるため、データに「これが正解」と印をつける作業。画像に枠を描く単純作業から、専門家の判断を言語化する高度なものまで幅があります。
TOPIC 4
ゼロから合成するより、自然の中を探したほうが速い
自然界を「数十億年かけて最適化された化合物ライブラリ」と見なす賭けです。
漢方は基本的に「昔からある処方を再現する」のが中心で、天然物のライブラリをAIで網羅的に解析して新しい化合物を探すスタートアップは、日本にほとんど存在しません。菌株も植物エキスも、大学に眠ったままです。
TOPIC 5
横断して見えたこと:課金の単位が「人数」から「終わった仕事」へ動いた
ほかにSpotifyの「Taste Profile」が米国で開放。推薦を言葉で直せる例は、日本のアプリにまだほとんどありません。
YコンビネーターのDemo Dayからは、モデルの重みをシリコンに焼き込むLamb Labsと、光を電気に戻さずそのまま振り分ける光スイッチのDipole Labs。どちらも日本の家電・自動車・通信大手と相性のよい技術です。