🗽 アメリカ最前線 ①
1.5億人分の免許証が流出した週に、日本は2027年4月の本人確認「総入れ替え」を控えている
きょうの結論
問われているのは事故そのものより、本人確認を代行する会社が本人確認データを溜め込むという設計のほう。日本はあと1年半で全事業者が入れ替える。設計を変えられるのは、その瞬間だけ。
TOPIC 1
1.5億人分の免許証が流出した。問題は事故より「預かる設計」のほう
本人確認を代行する事業者が、本人確認データを溜め込む構造そのものが問われている。
1.5億人流出した運転免許証情報(米国・カナダ)
2027年4月日本で券面画像方式が廃止される期限
600億円ゼロ保持型eKYCの市場規模(推定)
9月10日、米ルイジアナ州のID検証大手IDScanが、1億5,000万人超(米国・カナダ)の運転免許証情報の流出を認めました。ダークウェブ上に、それを誰でも検索できるサイトが存在していました。
TOPIC 2
そして日本は、2027年4月に本人確認を強制的に入れ替える
金融機関、暗号資産交換業者、携帯キャリア、不動産。本人確認を必要とする全事業者が入れ替える。
こういう強制的な入れ替えのタイミングでしか、設計思想は変わりません。乗り換えの瞬間に「データを事業者側に保持しない」を標準にできるかどうかで、今後10年の安全性が決まります。
ところが国内の主要eKYCベンダーの多くは、いまも本人確認データをクラウド側に蓄積するモデルです。「検証はするが原本は預からない」ゼロ保持型・オンデバイス型は、ほぼ空白。市場規模は600億円程度と見込まれています。
TOPIC 3
Miroが売られたのと同じ日に、234社が世に出た
モデルを作る会社ではなく、モデルを安く速く安全に動かす会社と、工場や機械に手を突っ込む会社が中心。
新しい会社が234社生まれた日と、かつて2.6兆円の値がついたSaaSが2,000億円で売られた日が、同じ日でした。新しいものを作る速度が上がるほど、既存のものの値段は下がります。日本にとっては二重の意味を持ちます。作る側が足りないという、いつもの話。そして買う側もいないという、あまり語られてこなかった話です。
TOPIC 4
【続報】9割引きで売られた会社の中身は、まったく健全だった
買収額の3分の1近くが手元現金。ARRの倍率で言えば2倍強。潰れかけを拾ったわけではない。
昨日の🔭で「2.6兆円が2,000億円になった」として扱った買収の、中身の数字が出てきました。ここからが続報です。
買ったのはイタリアの Bending Spoons です。先月も Airtable を12.8億ドルで買っています。Airtableの2021年の評価額は110億ドル超でした。同じことを繰り返しています。
ARR = 年間経常収益。月額課金の売上を12か月ぶんに直した数字。SaaSの規模を測るときの共通の物差し。
TOPIC 5
日本には同じ形の会社が並んでいるのに、買う人がいない
Bending Spoonsが欧米で買い集めている資産と、ほとんど同じ形をしている。
事業承継のM&A仲介なら、日本には厚い層があります。ただし彼らが扱うのは製造業やサービス業が中心で、「ソフトウェアを買って、自社の運用チームが入って、価格設計とリテンションを作り直す」オペレーター型の買い手ではありません。PEファンドも同じです。
しかも円安です。ドル建てで見れば日本のSaaSは歴史的に安く、上場企業なので財務情報も揃っています。海外のロールアップ勢が本格上陸する前に、国内で同じことをやる主体が出てくるかどうか。対象になりうる市場は3,000億円規模と見積もられています。
TOPIC 6
制作コストが80分の1になったら、質まで上がってしまった
「聴き手の好みに合う作品が増えたから」。量が嗜好の多様性をカバーして、継続率を押し上げた。
インド発の音声ストーリー配信 Pocket FM の話です。55万人を超えるクリエイターが年間250万時間のコンテンツを生んでいます。2年前、カタログ全体が約10万時間だったことを思うと桁が変わりました。
日本には「小説家になろう」「カクヨム」という世界最大級のテキストIPプールと、ボイスドラマ・ASMRという他国にない声の文化があります。それなのに、AI生成の音声IPを量産して都度課金で回すプラットフォームは存在しません。声優の権利処理が他国よりはるかに敏感な論点だからこそ、許諾済みデータだけで学習した国産モデルを先に押さえた者が標準を握ります。