Nvidiaが家庭のGPUを束ね、ある会社が複数のチップを束ね、インドの会社が指輪をコンピュータに変えようとしています。ぜんぶAIを自分の手元へ引き寄せるという同じ動きです。
Nvidiaが今週、PAIR(Personal AI Router)という道具を無料で公開しました。配布先はデータセンターでも企業のサーバー室でもありません。自宅に置いてあるただのゲーミングPCです。
やっていることは仕分けです。家にある何台かのパソコンを見張って、どこのGPUが空いていて、どのAIが載っているかを把握しながら、AIの仕事を手が空いている機械に割り振ります。やりとりする文章やファイルは、外のクラウドには一切送りません。
あるメディアは「月1,200ドル規模かかっていたクラウド利用料を、限りなくゼロに近づけられる可能性がある」と伝えています。
日本には「夜と休日はほとんど動いていない、それなりに高性能なパソコン」が家庭にも中小企業にも大量に眠っています。この遊休資産を計算資源として使うという発想は、まだほとんど根付いていません。
そこに逆風と追い風が同時に吹いています。逆風は円安によるクラウド料金の実質値上がりと電気代の上昇。追い風は「機密データをできれば海外のクラウドに送りたくない」という根強い警戒感です。この2つが重なると、手元を使い切る設計は本国以上に効きます。
ただしNvidiaは日本語の説明書もサポートも用意していません。そこに、PAIRを日本語化してサーバー室のない中小企業へ導入代行するという商売の余地が生まれます。記事の推定では国内で150億円ほどの市場規模。
Gimlet Labsという会社が9月4日、300億円規模を調達し評価額3,000億円に到達しました。新しい出資者にはArmとMicrosoftのファンドが名を連ねています。
やっているのはAIの計算を、1種類のチップに頼らず複数の種類に散らす技術です。いまのAI業界はほとんどNvidiaのGPUに依存していますが、そこに一石を投じようとしています。
これが日本にとって重要なのは、国の半導体戦略と正確に重なるからです。Rapidusの2ナノ国産化にも、Preferred Networksの独自チップにも巨額が投じられていますが、それらを実際の仕事の中で使い分ける受け皿となるソフトウェアが、国内にほとんどありません。結局みんな、クラウド越しにNvidiaのGPUを間借りしています。
インドのUltrahumanが9月3日、Qualcommを筆頭に70億円規模を調達しました。評価額は365億円。3年前の120億円から3倍です。
注目したいのは金額より宣言のほうです。同社が掲げたのは「指輪の上で直接ソフトウェアを動かし、AIとのやり取りやゲームまで扱える機械へ進化させる」という計画でした。半導体会社が出資したのも、次の世代の指輪に自社のチップを載せる狙いがあるとみられています。
日本のスマートリング市場は、いまほぼOuraの独壇場です。健康経営という考え方が浸透し、腕に何かを着ける抵抗感も薄れているのに、有力な国産勢は育っていません。壁は薬機法です。健康の数値をうたう製品は医療機器に当たるかどうかの整理が必要で、その面倒さが海外勢の単独参入を阻んできました。裏を返せば、そこを越えられる国内勢にはまだ席が空いています。
Palo Alto Networksが、社内IT対応をAIで自動化するConsoleを約750億円で買収しました。前日にはNvidiaがHugging Faceを1.9兆円規模で買っています。
ほかにも今日は、カスタマーサポートを丸ごとAIに任せるCapacityが年間経常収益100億円を突破し、保険業務を自動化するAxleが年間1兆円超の保険処理を4,000社向けに扱っていました。どちらも「万能なAIチャットボット」ではなく、業務を1つに絞り切ったエージェントだから実需をつかんでいます。
日本のコールセンターは今も人手に大きく依存し、損保の加入確認や更新手続きも代理店と保険会社の間で人を介して行われています。同じ形の空白が、そのまま残っています。
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