⚡ LAGLESS PORTAL💡 今日の事業アイデア2026-10-09 (金)バックナンバー
💡 今日の事業アイデア

利益率94.2%・年成長率142%。地方選の候補者と小さなNPOの寄付集めSaaSは、日本だと「帳票」で勝てる

きょうの結論

売るのは寄付の決済ではありません。「寄付のお願いを出した瞬間に、3月末の収支報告書が半分できている」という状態です。日本には、その書類を毎年必ず出す団体が11万ある計算になります。

TOPIC 1

「集めて、覚えて、帳簿にする」を1本でやるサービスでした

寄付する人 決済 支援者カルテ 法定帳票 カード・コンビニ CRM 3月末の提出物 払う 記録 自動出力 決済額の2% 月額サブスク 入口で「氏名・住所・職業・金額」を必須にする ← これが製品の背骨。あとから聞いても集まらない いまは「集める → 名簿に手で転記 → 選管の様式に打ち直す」で入力が3回 この3回を1回にするのが商品
決済・支援者管理・書類づくりを1本につないだ小さなSaaS。入口で法定記載の4項目を取るかどうかで、3月の作業量が決まる。
94.2%直近12か月の利益率(掲載値)
1,800万円直近12か月の売上($122,020)
142%年成長率(掲載値)

海外のM&Aマーケットプレイス Acquire.com に出ていた、米国ユタ州・2019年6月創業の寄付集めSaaSです。相手は「ダウンバロット候補者」と呼ばれる州議会・郡・市レベルの候補者と、小規模NPO。創業者は全員が別に本業を持ち、3年半を副業として回してこの数字です。

ただし数字にはアラがあります。同じ掲載の中で $114,915 が片方では売上、片方では利益として書かれており、顧客数と解約率は空欄でした。それでも取り上げるのは、移植する側に必要なのは売主の決算の正確さではなく、ビジネスモデルの構造だからです。

ダウンバロット候補者 = 投票用紙の下のほうに名前が載る、小さな選挙の候補者。市議・町議・郡の役職など。アメリカにはこれが膨大な数ある。
TOPIC 2

稼ぎ方が二階建てになっているのが、いちばん学ぶところでした

サブスクだけの場合 決済手数料を乗せた場合 顧客の寄付が増えても 自社の売上は横ばい 顧客が寄付を集めるほど 自社の売上も増える 顧客の寄付額 → 顧客の寄付額 → 自社売上 自社売上 収益は3本。①通した寄付の決済額2% ②月額サブスク ③寄付者データの販売 ③は日本では真似しない(要配慮個人情報に当たる可能性)
決済手数料を乗せることで、顧客の成長と自社の成長が連動する。サブスクだけだと顧客が成功しても売上は増えない。

技術スタックは Firebase、React、Google Cloud、Node.js、Stripe。特殊な機械学習も重いインフラもありません。競合として自己申告されているのは Bloomerang、ActBlue、EveryAction といった大手ばかりで、この会社は「大手が相手にしない、その下の層」を取りにいっています。

TOPIC 3

日本の市場を調べたら、きれいに真ん中が空いていました

左:名簿・地図 右:決済 中央:空白 スマート選挙 選挙クラウド/ミエセン 富士通 CRMate 地図落とし・宛名印刷 =「地上戦」の道具 カンタンネット献金 コングラント/Syncable 手数料5.5%〜8% カード献金・定期寄付 =「集める」の道具 集めた寄付が、 そのまま法定帳票の 下書きになる層 この層を提供している国内プレイヤーは、調べた範囲では見つからなかった カンタンネット献金のFAQは、収支報告や寄付金控除について 「各選挙管理委員会にご相談ください」= 帳票は守備範囲の外 制度を読み込まないと作れない。だから海外SaaSには埋められない
左は訪問・名簿の世界、右は決済の世界。その両方をつなぐ「帳票」の層だけが、国内では誰も担っていない。

政治資金規正法の記載ルールも、認定NPOのPST要件も日本独自のものです。Bloomerang や ActBlue が日本語化して進出してきても、この部分は作れません。制度差そのものが参入障壁になります。

PST(パブリック・サポート・テスト) = 認定NPOになるための条件のひとつ。代表的な基準が「3,000円以上の寄附者が年平均100人以上」。集計する事務作業ができないせいで届かない団体が多い。
TOPIC 4

「やめられない理由」が制度の側にあります

政治団体:選挙がない年でも、毎年3月末に提出義務 2026年3月末 提出 2027年3月末 提出 2028年3月末 提出 2029年…3月末 提出 年5万円超の寄附は、氏名・住所・職業・金額・年月日の記載が必須 NPO:認定を受けられているのは48,754法人のうち… 97.3%は認定なし = 寄附者が控除を使えない 2.7%(1,315法人)だけが認定。足りないのは制度適合ではなく「数える事務」 政治団体 約6万 + NPO 48,754 = 毎年書類を出す団体が11万前後
毎年必ず来る義務に紐づいたSaaSは、解約する理由が構造的に生まれにくい。「数えてあげるだけで価値になる」状態が97.3%に広がっている。

内閣府の数字では、2026年8月31日時点で認証NPO法人は48,754法人、うち認定・特例認定は1,315法人(2.7%)。地方議会議員は32,448人(総務省・2018年末時点)です。なお政治団体「約6万」は二次情報による推計で、一次情報で確認できたのは総務大臣届出分の2,910団体(提出率90.9%)だけでした。

TOPIC 5

いくら稼げるか、計算の過程まで置いておきます

1団体あたりの月額(ARPU)の内訳 サブスク 2,240円 決済手数料 3,467円 合計 5,707円/団体・月 団体数とMRRの見通し(推定) 1人で回せる現実的な上限は M12(280団体・約160万円)あたり M3M6M12 M18M24 10団体80280 6001,000 3万円46万160万 342万 MRR 570万円 MRR
M24の1,000団体は、11万という母数に対して約0.9%。粗利率は決済額を総額計上して64.9%、純額計上に揃えると84.9%相当。

料金はフリー(月0円・手数料6.9%)、スタンダード(4,800円・4.4%)、プロ(12,800円・3.9%)の3プラン。コングラントのライト4,000円とスタンダード8,000円の間に置き、決済手数料はカンタンネット献金の5.5%を明確に下回る位置にしました。

弱点も書いておきます。粗利率64.9%は「寄付者の手数料上乗せ同意率50%」という推定にまるごと依存していて、同意率が20%まで落ちると50.7%まで下がります。最初の100団体で必ず実測すべき、最重要の未検証仮説です。

TOPIC 6

コードを1行も書く前に、4週間で答えが出ます

地元の議員3人に、一問だけ聞く 「去年の収支報告書に何時間かかりましたか」 「3日かかりました」 → この市場は実在する 「税理士に丸投げ」 → 売る相手は税理士だった
どちらに転んでも4週間と数万円で答えが出る。しかもコードを1行も書く前に。

MVPに入れるのは、寄付フォーム+カード決済、法定4項目の必須入力、支援者一覧と寄付履歴、5万円超の自動仕分け、領収書PDFの一括発行、PSTカウンター、管理者2名の共有だけ。3〜4週で出せます。最初の10団体が欲しいのは「3月が楽になる証拠」であって、機能の多さではありません。

※ 元サービスの数値はすべて Acquire.com の公開リスティング掲載値です。日本版の料金・構成比・寄付流通額・MRR推移はいずれも推定値であり、実績に基づくものではありません。本記事は法令解釈の助言ではありません。政治資金規正法・公職選挙法・個人情報保護法・資金決済法の適用については、必ず専門家と所管の選挙管理委員会にご確認ください。

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